竹中半兵衛重治と云う人物は、織田上総介信長でも攻めあぐねていた岐阜城を少ない手勢で落城させた軍師の専門家である。
ところが岐阜城を落城させた後は、あっさりと主君に返上して竹中半兵衛重治自身は山奥で勉強三昧の生活をしていた。
そんな軍師の専門家を織田上総介信長が、欲しがる訳は自明の理である。
早速に木下藤吉郎秀吉を使者に立てて、織田上総介信長の家臣になるようにと懐柔した。
織田上総介信長は、美濃国に加えて伊勢国と伊賀国の3カ国を与えると云う破格の待遇で懐柔した。
しかし伊勢国も伊賀国も美濃国も、織田上総介信長の支配している国ではなかった。
つまりは他人の国を与えると云う空手形を切ったのである。
竹中半兵衛重治は、破格の待遇は嬉しい。しかし己は武士であり、他国を与えると云う事で心が左右される人間ではないと丁重に断って来た。
しかし織田上総介信長は、困難なミッションになればなるほど燃える男である。
挙げ句の果てには、織田上総介信長の2分の1の領地を与えると云う破格の条件を付けて来た。
そこまで評価されていれば、凡人の武士程度は報酬額に目がくらみ織田上総介信長の条件を受け入れる。
ところが竹中半兵衛重治は、領地は入りません。でも織田上総介信長の家臣になるのではなく木下藤吉郎秀吉の家臣になりたいと云って来た。
織田上総介信長は、先進的な武士である。
普通の武士ならば、家臣筋の家来になりたいと云う時点で無礼討ちである。
しかし織田上総介信長は、先が見通す事が出来る人物である。
木下藤吉郎秀吉は、自分自身の忠実な家来である。
その木下藤吉郎秀吉の家来筋は、当然の事ではあるが自分自身の家来筋である。
こんなに優秀な武士をスカウト出来るならば、木下藤吉郎秀吉の家来筋でも良いと判断したのであった。